余白の家

 

自邸で、ユカワデザインラボの拠点です。

隣接する畑側に広がる片流れの空間に、私道から始まり畑と繋がりながら私道上空に還る余白の空間を挿入することで、環境と応答する豊かな暮らしを生み出す住宅です。

 

余白の空間は、私道と畑の接点である外土間から内土間と続いて街に開かれた居場所を作り、畑に開かれた吹抜けを介して和室上部を通って私道上空に還ります。余白の空間に設えた開口、吹抜けの光と色が映り込む金属天井、和室の障子などが、時々刻々と移ろう光、緑や色彩を住環境に取り込みます。

 

余白を軸とした空間構成、開口計画、素材選定によって生まれる、様々なスケール、奥行き感、視線の抜けが、取り入れられた環境とともに一体の空間として編み込まれることで、豊かな空間が生まれます。

 

余白と住空間は場所ごとに光を透過する素材で遊び心を持って仕切る計画としました。仕切るという行為が空間の開閉に加えて光の状態を操作することとなり、より様々な環境での暮らしを楽しみができるようになりました。

 

1Fに設けた土間は木の緑だけがある具体的な用途のない、まさに余白の空間です。ギャラリーになったり、テレワークのオフィスになったり、子供たちの遊び場になったり、BBQパーティーをしたり。色々なことに使うことで余白が生活に彩を与えてくれます。

コロナ堝でも土間があることによって生活習慣の変化にも対応でき、落ち着いた暮らしを送ることができ、家の中に余白があること・緑があること・外との繋がりがあることの豊かさを実感しました。




■設計趣旨

 

□設計者編

 

大阪府茨木市の私道の先で畑が隣接する敷地に、環境との応答を促す循環する余白を設けた住宅。

 

私道は、一定の整備がなされている公道とは違い、舗装がされていない・街灯がないなどの生活上のデメリットを少なからず持つ存在である。しかし、私道を、所有者のセミパブリックスペースと積極的に捉え、私道に染み出し、また私道を取り込むことで、私道までを含んだ豊かな生活を生み出すことができると考えた。

また、敷地逆側で隣接する畑についてここでは、地表面以上の空間と青々とした緑は社会的財産であると考え、畑までもが住宅の庭であると位置づけて緑と空間を積極的に取り込むことを考えた。

そこで、私道と畑から住宅内部を通り、畑に開きつつ、私道上空に還っていく余白が環境=光・風・緑・色彩・アクティビティの循環を作ることで、環境と住空間とが応答し、豊かな暮らしを生み出す住宅を設計した。

 

余白は、私道と畑が出会う外土間を起点に内土間と続いて街と繋がる居場所を作り、畑に開かれた吹抜けを介して和室上部を通って私道に還える。ヴォイドに設えた開口、吹き抜けの金属天井、和室の障子、ポリカ波板等が私道と畑から時々刻々と移ろう光と影、緑や色彩を住環境に取り入れ、さらに内土間の緑がそれを増幅する。また、夜には余白を通して暮らしの明かりがお迎えの光として私道を明るく照らす。

畑に広がる片流れの空間に、私道に広がる余白を挿入し、それを軸とした空間構成、開口計画、素材選定によって生まれる、様々なスケール、奥行き感、視線の抜けが、取り入れられた環境とともに一体の空間として編み込まれることで、豊かな空間が生まれた。

 

 

余白の中心でもある1Fに設けた土間は具体的な用途のない、まさに余白の空間である。これから、ギャラリー、子供たちの遊び場、BBQスペースなど色々なことに使うことで生活に彩を与えるだろうと考えていた。奇しくもコロナ禍において、住宅にいる時間が長くなり、生活スタイルが変わってしまっても、余白の空間があることで、環境を感じながら変化に応じた柔軟な対応ができ、豊かな生活が守られることが立証された。これからも設計者自身がこの場所で、内部の豊かさはもとより私道と畑を含む環境にも開かれた豊かな余白のある暮らしを実践していきたい。

 

 

 

□建主編

 

自分の家を建てる、自分の家に住むということを最高の喜びにするため、

3つのことを考え、叶えました。

 

くしくもコロナ禍において、家で過ごす時間が増えるなど住まいを取り巻く環境が変わる中で、これら3つはこれからの住まいに必須のものではないかと思います。

 

1)自分たちの喜びに溢れた空間

 

   自分たちにとって大切にしたいもの、

  

   旅先で集めた小物やアート、今まで読んできた数々の本、

   ゴロゴロ出来る冷たい床、開放的な空間と少しこもれる空間、

   ワインセラーとワイングラスを飾る棚、

   ゆっくり家事のできる家事テーブル、

   皆でパーティーや生け花教室を楽しめるスペース、、、

 

   決して豪邸ではないですが、

   色々な工夫を凝らしてそれらを、妥協なく、丸ごと詰め込んだ

   自分たちにとって唯一無二の喜びに溢れた空間を作ろうと思いました。

 

 

2)環境とともにある家

    

   環境:《光》・《風》・《緑》・《色》・《人》 を積極的に取り入れることんだ、

   季節の機微、豊かな変化を感じ、喜びある生活をしたいと考えました。

  

   私道の先の、隣が畑で空にひらけた、陽だまりの土地を見た時、

   環境を豊かに取り込んだ家ができる予感に、大袈裟でなく心が踊りました。

   その予感を実現すべく、街や私道、畑や公園との関係を丁寧に紡ぎ、

    そこにある環境が生き生きと関係し合う家を作りました。

 

3)これからもずっと楽しい家

 

   家は建てて終わりではありません。

  

   これからの家族の成長、社会の変化に合わせて

   まるで着慣れた部屋着のように、その時の家族にフィットする、

   決め切らない余剰空間がその時々の豊かさをもたらしてくれる、

 

   射程長く計画された家を作りました。

 

 

 

■建築概要

構造設計:tmsd萬田隆構造設計事務所

施工  :株式会社ヴィーコ

構造  :木造

階数  :2階

延床面積:126.38㎡

 

写真撮影:笹の倉社 笹倉洋平